上自衛隊の南川信隆(Nobutaka Minamikawa)陸将は、統合幕僚監部運用部長として、2024年に米国ネブラスカ州オマハで開催された「米国戦略軍抑止シンポジウム(United States Strategic Command Deterrence Symposium)」でSentry誌の取材に応じた。インド太平洋地域の自由で開かれた秩序、地域のパートナーとの協力、そして抑止を確保するうえでの日米同盟の重要性について語った。取材当時、南川氏は統合幕僚監部防衛計画・政策部長の陸将補であった。その後、陸将に昇進されている。

SENTRY:戦略的抑止とは何か。何故日本 にとって重要なのか

南川陸将:ロシアによるウクライナ侵略が示すように、国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入していると認識しています。東アジアにおいても、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されません。

中国は、核・ミサイル戦力を含め軍事力を広範かつ急速に増強させるとともに、東シナ海・南シナ海において、力 又は威圧 による一方的な現状変更やその試みを継続・強化しています。また、台湾周辺における威圧的な軍事活動を活発化させています。また、北朝鮮は、近年、高い頻度で弾道ミサイル等の発射を繰り返し、核・ミサイル開発を急速に進展させています。

さらに、ロシアは、ウクライナ侵略を行う一方、我が国周辺において、中国と共に、艦艇の共同航行や爆撃機の共同飛行、各種訓練を実施するなど、 中国との軍事的な連携を強化 しています。

このように、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に 直面するなか 、 あらゆる事態において我が国を守り抜くため 、 防衛力の抜本的強化を含む努力と 拡大抑止 の更なる強化等により、 我が国自身及び日米同盟の対処力・抑止力を一層強化することが重要だと考 えます。

米国空軍儀仗隊ドリルチームの隊員が、2025年4月、横須賀の防衛大学校を訪問した際、同校の儀仗隊ドリムチームの士官候補生にドリル技術を実演している。YASUO OSAKABE/米国空軍

SENTRY: 日本の戦略抑止態勢の主要な要素は何か。

南川陸将:我が国の抑止力の主要な要素は、 ① 日本自身の努力による抑止態勢の強化 、 ② 核を含むあらゆる能力によって裏打ちされた米国による拡大抑止、 ③ 日米の戦力の密接な連携だと考えます。日本が今後保有するスタンド・オフ防衛能力 等 を活用した反撃能力は我が国の防衛力を向上させるものです。 また、核抑止力を 含む 米国の拡大抑止は不可欠です。 さらに、これらの日米の能力が密接に連携することが重要です。このように 日本自身の努力と 米国の拡大抑止が相まって日本の抑止が 強化される と考えています。

SENTRY: インド太平洋地域における 日本 の戦略的抑止の主な課題と機会は何か。

南川陸将: 日本と米国の強固な同盟関係は、 我が国の 抑止における大きな利点です。あらゆる機会とレベルを通じて、日米のパートナーシップが揺るぎないというメッセージを送り続けることが抑止をより確実なものにしていくでしょう。今後の課題は、我が国のり続けることが抑止をより確実なものにしていくでしょう。今後の課題は、我が国の反撃能力反撃能力として活用するスタンド・オフ防衛能力として活用するスタンド・オフ防衛能力を計画どおり着実に整備するとともを計画どおり着実に整備するとともに運用可能な状態にしていくことと考えます。に運用可能な状態にしていくことと考えます。戦略的攻撃が核によるものだけに留ま戦略的攻撃が核によるものだけに留まらない現代においては、このような通常戦力の分野における取組の重要性が高まってらない現代においては、このような通常戦力の分野における取組の重要性が高まっていると考えます。いると考えます。

SENTRY:地域における戦略的抑止を強化するため、日本は 同盟国及びパートナー国とどのように協力していくか。

南川陸将:核兵器の脅威に対しては、核抑止力を含む 米国の拡大抑止が 不可欠 となります。これに加え、わが国の防衛力の抜本的強化を図ることにより、米国の能力のより効果的な発揮にも寄与するとともに、日米同盟の抑止力・対処力の一層の 強化を期待することができます。また、わが国の防衛力を高めるためにも、同盟国である米国のみならず同志国 等 との連携を強化することが極めて重要である と考えています 。

2025年4月、日本の小松航空基地で行われた航空機引渡し式典で展示されたF-35戦闘機。日本が最初の3機のF-35戦闘機を受領し、航空自衛隊にとって歴史的な節目となった。 航空自衛隊

SENTRY:自由で開かれたインド太平洋を維持する上 での日本の役割は、グローバルな舞台にどのようにどのように拡大して拡大していくのか。いくのか。

南川陸将:今やインド太平洋と 欧州・ 大西洋地域の安全保障は不可分 一体 となっています。我が国がインド太平洋地域における抑止力を強化すること、また、 同盟国の 米国 、 豪 州や NATO 加盟国 を始めとした 同盟国・ 同志国 等 との連携を強化することがグローバルな平和と安定に寄与するものと考えています。

SENTRY: 日本の最も重要な同盟国はどこか。

そしてその関係を拡大するために何をしているのか。

南川陸将: 我が国にとって米国は唯一の同盟国です。日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸であり、様々な分野での協力を通じて、同盟の抑止力・対処力の一層の強化に取り組んでいます。

SENTRY:抑止力 を増やすため、さらに協力したい国や、現在協力している国はどこか。

南川陸将:同盟国である米国のみならず同志国等 との連携を強化することが 抑止を強化していく 上 で 重要である と考えています 。昨今、我が国は、 インド太平洋地域の諸国との協力を 進め 、欧州各国との連携も強化しています。

SENTRY:戦略的抑止の観点から、日本は新たな 技術がもたらす課題にどのように取り組んでいくか。

南川陸将:人工知能や次世代情報通信技術を始めとする急速に進展する技術は、将来の戦闘様相を一変させ得ると考えられます。その場合、従来型の防衛力による抑止力が低下する可能性があります。こうした中、 関連する議論及び国際的なルール作りに積極的かつ建設的に参加しながら、 最新の技術を取り入れた装備品の早期実用を図り、わが国防衛力の抜本的強化を図るとともに、サイバー領域など多領域における強 じん 性を高めることにより、抑止力を維持、強化していく必要があります。

東京東方の習志野演習場で行われた多国間共同訓練において、兵員、車両、火砲を輸送する陸上自衛隊のヘリコプター。AFP/GETTY IMAGES

SENTRY:日本は、防衛 力 と 、 平和 及び軍備縮小への コミットメントとのバランスをどのようにとっているのか。

南川陸将:これまで我が国は、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本方針に従い、日米安全保障体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を整備してきています。 この際、透明性の確保に留意しています。

さらに我が国の実効性のある防衛力が抑止に寄与し、これが地域の平和と安定に貢献していくと考えます。

SENTRY:サイバー攻撃の脅威に対し、日本の 戦略 的 抑止態勢はどのように 取り組んで いるのか。

南川陸将: 我が国は、悪意ある主体の行動を抑止し、国民の安全・権利を保障するため、国家の関与が疑われるものも含め、サイバー空間における脅威について、平素から同盟国・同志国と連携し、政治・経済・技術・法律・外交その他の取り得る全ての 有効な手段と能力を活用し、断固たる対応をと ります 。この点に関し ては 、 2019 年 4 月 の日米「 2 +2 」において、一定の場合には、サイバー攻撃が日米安全保障条約第 5 条の規定の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認したところで す 。

また、サイバー攻撃は、重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらんでいることから、平時・大規模サイバー攻撃事態・武力攻撃という事態のエスカレーションにもシームレスに移行することで、迅速に事態に対処するとともに、 日米「 2+2 」の成

果を踏まえ、引き続き日米同盟の抑止力を維持・強化してい きます 。

横田基地での搭乗前にブリーフィングを受ける陸上自衛隊の空挺隊員。ナタリー・ドアン(NATALIE DOAN)/米国空軍

SENTRY:軍備管理・不拡散の問題について、日本は防衛政策としてどのように取り組んでいくのか。

南川陸将: 大量破壊兵器及びその運搬手段となり得るミサイルなどの拡散や武器及び軍事転用可能な貨物・機微技術の拡散については、国際社会の平和と安定に対する差し迫った課題です。

日本の国家 安全保障戦略において、自由で開かれた国際秩序を強化するための取組のうち、重要な方策の一つとして、大量破壊兵器などの軍備管理・軍縮及び不拡散について言及しており、また、国家防衛戦略においても、国際機関や国際輸出管理レジームの実効性の向上に協力していくと述べています。軍備管理・軍縮・不拡散に 関わる 国際的な 取 り 組みにおいて 、わが国も積極的な役割を果たしていきます。

SENTRY:現在、非常に分裂しているように見える世界において、我々は統合をどのように進展させていくのか。

南川陸将: 我が国は、法の支配に基づく国際秩序維持の価値観を各国と共有し、国際協調を旨とする積極的平和主義の立場から、世界各地における紛争・対立の解決に向けた努力、気候変動等に起因する国際的な大規模災害に際しての人道支援・災害救援、大量破壊兵器の不拡散等の国際的な課題への対応に積極的に取り組んでいく必要があります。

日米は、民主主義に基づく共通の価値観を持つ同盟国として連携し、こうした課題に取組んでいく必要があります。

東京東方の習志野演習場で行われた多国間共同訓練において、兵員、車両、火砲を輸送する陸上自衛隊の航空機。AFP/GETTY IMAGES

SENTRY:特に誇りと している戦略的抑止・防衛 能力 は何か。また、どの分野 において、進歩に取り組んでいる か。

南川陸将:既に述べたように抑止という観点では、我が国の防衛力の抜本的強化 、 米国による拡大抑止、日本と米国の密接な連携というものが重要になってくると思います。

我が国の防衛力の抜本的強化といった観点では、①スタンド・オフ防衛能力、②統合防空ミサイル防衛能力、③無人アセット防衛能力、④領域横断作戦能力、⑤指揮統制・情報関連機能、⑥機動展開能力・国民保護、⑦持続性・強 じん 性といった分野の強化を進めています。

SENTRY:戦略防衛計画の策定において、ソフト・パワーはどのような役割を果たしているのか。

南川陸将:戦略防衛計画の策定において、抑止は重要な役割を占めています。抑止とは我々 の望ましいエンドステートをターゲットに認知させ、そのようなエンドステートを阻むことがターゲットの利益に資さないと認識させることにより達成されるものであり、抑止を実現するためには、ソフト・パワーの活用が有効と考え ます 。

具体的には、防衛省・自衛隊が実施する様々な活動やその目的等について、同盟国や同志国と連携しつつ、国際社会に対して発信し、各国による防衛省・自衛隊への信頼を伝えることは、抑止に寄与していくものと考えます。

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