フィンランド政府は、新たな脅威に対処する取り組みの一環として、年間防衛費を2032年までに10兆5400億円(68億ドル)から17兆8250億円(115億ドル)へ引き上げる計画を発表した。 これにより、フィンランドの防衛費は国内総生産(GDP)の3.3%に達し、NATOの2%の指針を大きく上回るとともに、2024年のGDPの2.4%とされる現行水準も上回る見込みだ。
2024年12月にフィンランド議会エドゥスクンタ(Eduskunta)に提出された防衛報告書では、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、西側諸国への脅威の増大が指摘されている。 この報告書には「ロシアは西側とのよりオープンで予測不能な長期にわたる対立へと踏み出し、引き続きヨーロッパとフィンランドにとって長期的な安全保障上の脅威をもたらすだろう」と記されている。
「フィンランドおよび地域における安全保障情勢は予測が難しい。 急速に悪化する可能性がある。 広範囲にわたる影響に対抗し、軍事的圧力に抵抗し、数年間に及ぶ可能性のある大規模な戦争を戦う能力を強化するためには、防衛と国家安全保障へのさらなる投資が必要だ」とアンティ・ハッカネン(Antti Häkkänen)国防相はヘルシンキでの記者会見で述べ、フィンランドの防衛能力が全般的に強化されると付け加えた。 「その結果、国防改革を進めると同時に、空軍と海軍で進行中の主要プロジェクトを完成させる予定だ」
北欧のフィンランドは2023年4月にNATOに加盟しており、今回の防衛戦略は同国が同盟加入後行う初めての発表となる。
フィンランドの行動は、NATOのマルク・ルッテ(Mark Rutte )事務総長が、中国共産党とロシアが軍備増強に取り組んでいることを指摘し、同盟国に対して現行の2%の最低支出基準を上回る支出目標に合意するよう促したことと時を同じくしている。
「戦争を防ぐためには、戦争に備える必要がある」と、同氏は同盟国の防衛責任者会合で述べた。 「今こそ戦時体制の思考に切り替える時だ」
日本との連携強化
フィンランドは日本との防衛協力も強化している。 両国は共にロシアと隣接する国であり、共有する安全保障上の懸念に対応するため、防衛産業分野での協力を可能にする軍事技術および装備移転協定を計画していると、フィンランドの首相ペッテリ・オルポ(Petteri Orpo)氏は2024年12月の東京訪問中にジャパンタイムズ紙に語った。
「ロシアと北朝鮮の軍事協力の深化は、ユーロ大西洋およびインド太平洋双方の安全保障にとって脅威であり、両地域がいかに密接に関連しているかを示している」とオルポ氏は述べた。 「北朝鮮の兵士がヨーロッパの地で戦っている今、ある地域の安全保障を他の地域の状況抜きに完全に理解することはもはや不可能であることは明らかだ」
この協定は、両国の先端技術の知見を活用し、防衛研究、開発、生産の協力のための枠組みを構築することを目指している。 共有される可能性のある技術には、5G通信、宇宙およびレーダー技術、海中システム、情報および監視製品などが考えられる。
「分析結果の共有と比較が重要だ」とオルポ氏は述べた。 「フィンランドにとって、ロシアがヨーロッパおよび世界の安全保障にとって長期的な脅威であることは明らかだ」