世界の安全保障環境や軍事技術が急速に変化する中、NATO(北大西洋条約機構)も変革を進めていると、同機構のデジタル変革担当責任者は述べた。 今日の近代化とイノベーションは、絶え間なく迅速に進めなければならないと述べたのは、NATO欧州連合軍最高司令部変革担当(Supreme Allied Commander Transformation)の特別顧問も務めるフランス陸軍兵器科のドミニク・リュゾー(Dominique Luzeaux)少将だ。米国バージニア州アーリントンで2026年6月に開催されたディフェンスワン・テクサミット(Defense One Tech Summit)でリュゾー少将が講演したことを防衛専門サイト「ディフェンスワン(Defense One)」が報じた。
防衛システムの変革は、単にドローンを配備するだけではない。 リュゾー少将は、この急速な変化の例として、ロシアとの戦争においてウクライナが無人地上機、無人航空機、無人水上艇、無人潜水艇の運用を拡大していることを挙げた。
「重要なのは、統合されたマルチドメインのロボティクス・エコシステムを構築することだ」とリュゾー少将は述べた。 「勝敗を左右するのは1機のドローンではない。 適切な数のドローンが、適切な場所で、適切なタイミングに連携して運用されることが、本当の違いを生み出す」
また、ウクライナ戦争から得られたもうひとつの教訓はイノベーションサイクルの短縮であり、従来の長期的でプラットフォーム中心の近代化を置き換えつつあると同氏は言う。 「重要なのは、さまざまなアセットを統合・連携させることだ。
戦争初年度のウクライナを見ると主に旧ソ連製兵器を使用しており、戦況は劣勢だった」とリュゾー少将は語った。
しかし、ウクライナは進化することを学び、その後ロシア軍も同様に変化した。
「2年後にはロシア側もイノベーションサイクルを変化させ、イノベーションサイクル同士の競争となった。すべてを失わないためには、ウクライナはシステム中心のイノベーションから、より幅広いイノベーションへ移行する必要があった。戦術レベルや個々のプラットフォームだけでなく、より包括的な視点を持ち、戦略・作戦・戦術の各レベルを一体的に進めることが求められた」とリュゾー少将が語ったことをディフェンスワンは報じている。
NATOは現在、こうした原則を迅速に取り入れる取り組みを進めている。 NATOの戦略的な戦闘能力開発を担うNATO変革連合軍(Allied Command Transformation – ACT)は、NATO公式サイトによると、「軍事組織、部隊、能力、ドクトリンの戦略的発展を主導することで、加盟国の平和、安全保障および領土保全の維持に貢献する」ことを任務としている。 変革連合軍の主なイノベーションの取り組みには、次のようなものがある。
- タスクフォースX(Task Force X): 2025年に発足した専門イニシアチブで、自律システムと人工知能(AI)を迅速に導入し、状況認識能力を向上させることで、NATOの海洋安全保障の強化を目指す。
- イノベーション・チャレンジ(Innovation Challenge): 年2回実施されるシナリオ形式の演習で、NATOと加盟国が共通して直面する作戦上の課題について、効率的かつ費用対効果の高い解決策を検討する。
- 人工知能(Artificial intelligence): AIを活用した実用的で作戦に直結するソリューションや試作モデルを開発し、意思決定の迅速化、作戦効率の向上、状況認識能力の強化にAIがどのように貢献できるかを実証する。
- 宇宙領域の統合(Space integration): NATOの宇宙分野ビジョンは、宇宙領域をマルチドメイン作戦へ統合すること、強靱な宇宙能力を強化・維持すること、そして新たな脅威に対応できる作戦即応態勢を確保することの3つを柱としている。
フランス海軍の ピエール・バンディエ(Pierre Vandier)大将(ACT司令官)は、2026年6月に大西洋評議会(Atlantic Council)のスコウクロフト戦略・安全保障センター(Scowcroft Center for Strategy and Security)が主催したウェブキャストで、NATOにおける変革はこれまでになく重要になっていると述べた。 過去には、防衛システムに求められる要件は、「戦闘の規模がある程度限定された安定した世界」を前提に定められていた。当時は、NATO加盟国間の相互運用性には、それほど重点が置かれていなかった。 「現在、我々は長期化する大規模紛争に直面しており、それに対応できる産業基盤が必要だ」とバンディエ大将は述べた。 「ロシアが戦い方を変えてきたことを私たちは目の当たりにした。 だからこそ今、変革が求められている。そうしなければ、私たちは過去の敵と戦うことになり、現在や将来の敵には対応できない」
